山田宏平の今とこれから

稽古に行き詰まったとき、俳優がすること(学生たちの質問メールへの返信文)

久々のブログ更新です。
本年もよろしくお願い致します。

2015年の下半期は、
3つの舞台に出演し、
1つコンサートに出演し、
3つの作品を演技指導し(うち1本は副指揮者ならぬ副演出のような役割でした)、
都内のK小学校6年生たちと作品づくりを主にしたワークショップをし、
青山学院大学でコミュニケーションプログラムの授業を行ないました(社会情報学部)。
東京を出て新潟県でも2回新潟の演劇人たちとワークショップを行なったのもよい体験でした。

青学で行なったプログラムはコミュニケーションワークショップに、
新潟で行なったプログラムは地域で行なう俳優向けワークショップに、
そのまま使えるモデルになりそうです。
お声掛けいただけたら、どこへでも伺います。

また、2/6(土)7(日)に王子スタジオ1でワークショップをやります。
現在twitterに4つに分けて詳細アップしているので、興味あるかたはぜひぜひ
(アカウントは@koheiyamadaです)。

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さて、本日の主題。
洗足音大での授業もいよいよ年度末で、担当授業の試験(すべて実技の発表)が相次ぎます。
試験前と公演前は学生たちからの質問も増えます。
その中のひとつにメールで答えた文章を読み返したら、
学生に限らず若い俳優さんたちからよく受ける質問への答えになるかも…と思ったので、
やりとりをしていた学生の許可を得てアップします。
ちょうど忙しい時間に書いたので長文かつまとまりがないのですが、
備忘録用にそのままアップします。

ちなみに質問は
洗足音大ミュージカルコースの1年生のシーンスタディ(作品づくりの授業)についてで、
試験での作品発表(「サウンド・オブ・ミュージック」のダイジェスト版)を前に、
チームで練習していて
通し稽古も何回かして、受けたチェックをもとに修正して、
でもまだ不安なので集まって稽古しているが、
いくらやってもぬめっとした感じになり、
先週ある先生から指摘された「エネルギーの足りなさ」も解消できる気配がない。
これ以上どうしていいのかわからなくなり、煮詰まっている、
というものです。
2通に分けて返信しました。

(以下1通のメール返信文)

お疲れ様です。山田です。
シーンスタディの試験科目を練習していくうえで
「自分(たち)がどうしていいのかわからない」という質問。
それについて思うことがあるので、ちょっと長いですが、以下に書きます。

まず、「どこをどうしたらいいかわからない」という問題とどう戦うかは、
アーティストを目指すうえで、そしてアーティストとしてやっていくうえで
ずっと向き合わなければならない課題です。

台本や楽譜を覚えた、振付や段取りをこなせるようになった、というのは
ゴールのように思えてただの入り口です。

セリフや歌やダンスを通じて、演じる役の人物の魅力をすべて出す。
これが俳優の目指すところです。
そのためにはまず正確さ。
セリフや音程や振りを正しくするだけでなく、
それぞれの曲やセリフにちょうどいい息の量や声量、
激しさや優しさなどのニュアンス、
それらがちょうどいいテンポで動きを伴いながらやれること。

そして、それが共演者や伴奏とともに何度でも繰り返しできること。
これが「正確さ」です。

なので、まずは「正確さ」の設定をきちんとすれば、
「どうすればいいかわからない」という疑問は薄らぐのではないかと思います。
まだまだそれぞれが個人でやるべきところが増えるわけですから。

ちなみにひとりひとりがしっかりしてくると、
歌やセリフが本来持つ魅力がどんどん出てくるので、
相手役や観客が刺激を受けます。
その先に、
「ならもっとこうしたら」ということが見えてくるのです。

つまり、まだまだそれぞれの個人作業がベストでないところで稽古しているから
「ぬめっと」してしまうのであって、
いまの段取り(自分たちがつくったものを含む)を疑うのではなく、
それを信じたうえで各自がもっと自分のセリフや歌や振りを磨く、というのが
いちばんの近道なのではないかと思います。

とはいえそれだけ伝えるのも「あんまり」なので、
何か質問がありましたら、メールで受け付けます。
メールなのでわかりにくいかと思いますが、それでもよければ、
質問のポイントを明記して送ってください
(「不安なので何かアドバイスして」というひとは、ここで書いたことを参考に、楽譜や台本を読み直し、コツコツ稽古してみてください。それがきっと役に立ちます)。

では。発表、楽しみにしています。


(以下2通目のメール)

これだけだとあんまりなので、
下記の「話し合いで出たポイント」について、
稽古をできたらいいのですが、言葉で伝えてみます。

・ぬめっと感がどうしてもあること

⇒それぞれのシーンがどういうシーンか、もう少し考えてみるといいのではないかと思います。

ついつい美しくて穏やかな音楽が全編流れる、のどかで平和な作品に思いがちですが、
決してそんなことはないのです。

【修道院のシーン】はシスターたちの活き活きとした「神様と自分の愛の時間」をマリアがぶち壊しにされ、
その悩みをぶちまける大混乱のシーンです。
【院長とマリアの会話】は懸命に(文字通り命をかけて)赦し(ゆるし)を求めるマリアに、
院長が神のメッセージを与える気迫に満ちたシーンです。
【トラップ家のシーン】は大人と子どもの主導権をかけた息もつけないバトルです。
【ロルフとリーズルのシーン】は厳格な父親やうるさい兄弟の目を逃れて恋する二人がやっと会ったのに
自分の気持ちが通じない、でも大好き、でも…という葛藤に満ちた二人の愛のバトルです。
【羊飼い】以降も大きな葛藤や解放に満ちた、ダイナミックなシーンが続きます。
ぬめっとしているのはまだまだそれぞれのシーンでの俳優の「愛」や「情熱」や「プライド」が足りないから、何を言われても平気(嬉しくもなければ腹も立たない)という状態になっているのかもしれないなと思いました。

・これから何を詰めていけばいいかわからないけどだれていることの自覚はある

⇒なので、シーンの魅力を充分に感じていないなかただただ稽古しても
行き詰ってしまうということだと思います。
もっと魅力的なシーンだし、歌やダンスだし、役だし、と考えていき、
ひとつでも「もしかしたら(このセリフって、この曲って)もっとこうかもしれない…」
ということを探してみたらどうでしょう。

・もう一度それぞれの関係、プロフィールを確認し、稽古をたくさんして体に染み込ませようとしています

⇒自分(の役)のしていることに対して、「好き」なのか「嫌い」なのか。
それがどのくらいなのかを見つけ、体に染み込ませるといいと思います。

例えば院長は劇中に何度かシスターたちの相談に乗りますが、
ひとの相談を受けてアドバイスするのは好きなのか嫌いなのか。
好きだけど苦手とか苦手だけど好きとか、ベルテは好きだけど文句を言うベルテは嫌だ、とか、
想像できることはいろいろあると思います。

マリアは遅刻しそうになって走って修道院に向かう自分が好きなのか嫌いなのか。
すごく自己嫌悪におそわれているのかもしれませんし、
朝の空気の中を走り抜けることで気持ちよくなっているのかもしれません。
怒られることなんかなんとも思ってないのかもしれませんし、
すごく罪の意識を感じているのかもしれませんし、
悪いと思っているけれど嫌味を言われるのは大嫌いなのかもしれません。

ほかの役にもほかの場面にも、そういう可能性がいっぱいあります。
それを見つけ出してやってみるのが俳優の仕事です。
こういったことについてイメージして、演技に反映しようとしてみてください。
本番間近でかなり役が染み込んできた今だからこそやれる作業です。

・前回の授業でX先生が言っていた「エネルギーの出し方」がよくわからない。そして悔しかった。

⇒これを理解し実践するには時間が必要です。
これからの学生生活で練習を積み重ねていってもらえればと思います。

でも来週までにできることはあります。
もっともっと「伝える」ことに力を注いでもいいのにと、5つのチームすべてに思いましたし、
やれることだと思います。
例えば「羊飼い」で街なかで歌い踊るシーンを
「楽しんでる自分たちを見て楽しんでもらおう」と俳優が思っていると
ステージの人間たちから出てくるエネルギーは物足りなく感じるようになってしまうように思います。
あのナンバーは「見て! いままで見かけた自分たちと今は全然違うでしょう!」と
街のひとびとや物たち(あと観客)に全身で伝えるシーンだと思います。
そして重しがとれた状態で街に出てみたら、
怖くて近寄れなかった酒場のおじさんたちも愛らしく見えるし、
そこいらに落っこちているものも楽器みたいに見えてくるし、
街にいるひとたちの真似をしているだけで楽しくなってくる
(誰かの真似をするなんて悪ふざけはこれまで許されてなかったかもしれません)し、
とにかくやってみたら楽しい。
そんな私たちを見て! この子たちを見て! 
という思いに満ちたナンバーなのだと思います。
ほかのシーンやナンバーにも、
それぞれの役が言葉や行為や歌を通じて伝えたいことがいっぱいあります。

自分のことや自分の求めていることをわかってもらうために伝えるとき、
ひとはいつもより必死になります。
その必死さが出てきたとき、エネルギーは伴ってくるのだと思います。

・子供たち、シスターが今どう見えているか、そしてどこを目指せばいいか。

⇒それぞれのキャラクターはよいですし、関係性も悪くないと思います。
なので、いまつくってきたものを不安に思うよりも、
いま自分(自分たち)のつくっているものが充分に相手や観客に伝わり、
相手や観客が態度を変えてくれるのを目指すこと。
それが残りの日々でやれることだと思います。

以上、遅くなりましたが、参考にしてみてください。


山田宏平


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「山田宏平 冬の盛りのワークショップ」参加者募集中

一見距離が遠く感じる古典戯曲の登場人物を演じるとき、
どうやってその役と仲良くなるか。
その役の人物を自分の親友のように感じるためのプロセスを、
「カフェトーク法」「ツボ法」などの方法を用いて、
2日間で体験してもらいます。

会場:
王子スタジオ1(東京メトロ南北線・JR京浜東北線王子駅6分)
http://oji-st1.blogspot.jp/p/blog-page_8868.html?m=1

日程:
Aクラス(題材:シェイクスピア「ロミオとジュリエット」)
2月6日(土)13:00~17:00 7日(日)13:30~19:30
Bクラス(題材:チェーホフ「三人姉妹」)
2月6日(土)18:00~22:00 7日(日)13:30~19:30
※7(日)はABクラス合同で行ないます

参加料:
AB全通し:6,000円
AorBクラス通し:5,000円
単回参加:3,000円

申込:
bbkyamada*k6.dion.ne.jp (*を@に換えてください)まで、
タイトル「WS参加希望」とし、
お名前、性別、年齢、演技経験の有無(ある方は簡単な演技歴も)、希望コースを明記の上、
メールにてお申込みください。

みなさまのご参加、お待ちしております。

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by blancbecbbkyamada | 2016-01-15 22:37 | Trackback | Comments(0)
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演劇活動(主に俳優仕事とワークショップ仕事)に関するブログです。今とこれから(あとたまに甘い過去)について、不定期に更新します。
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